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多分・・今日も圭人は来ない・・私はお昼ご飯の後片付けをして立ち上がった。
あ・・嘘・・ふと、見上げた校舎の二階の右端の教室に・・圭人がいた。
圭人は誰かと話してた・・話相手の姿はカ―テンで隠れて見えなかった。
圭人の後ろに画材らしき物が見えた。
キャンバス・・かな?・・かなり大きなサイズの物だった。
知らなかった・・ここから美術室が見えていたなんて。
久し振りに見た圭人の姿にギュッと胸が締め付けられるように苦しかった。
苦しくて目を逸らそうとした時・・ふわりと風が吹いて風でカ―テンが揺れて圭人の話相手の姿が見――え?・・女の人・・?
圭人の話相手はチラッと見えただけだったけど・・とても綺麗な女子生徒だった。
目を逸らそうと思ったのに出来なかった。
私の身体は固まったみたいに動かなかった。
うっ・・窓に近付いて風に揺れるカ―テンを留めようとした圭人が私に気が付いた。
一瞬、目が合った・・圭人は何時ものように私に微笑んだ。
嫌だ・・こんな所にいるとこ見られたくなかった。
来もしない圭人を待って一人で裏庭でお昼を食べてる姿なんて知られたくなかった。
私は固まった身体をなんとか動かして逃げるように裏庭から出た。
午後からの授業は最悪だった・・当然の事ながら授業の中身なんてなんにも頭に入ってこなかった。
頭の中に浮かぶのは・・圭人と女子生徒の姿だった。
圭人の嘘つき・・お昼休みは前の美術部の部長との引継ぎだって言ってたのに・・女の人と会う為だったんだ。
彼女だろうか?・・うっ・・くふっ・・圭人のバカ・・本当の事聞くのは辛いけど・・嘘をつかれる事はもっと辛かった。
・・私は人目も憚らず泣いていた。
幸いにも私の席は窓側の一番後ろだった。
右隣の席の男子が私の涙に気付いてギョツとしたように見てた。
放課後、HRが終わると直ぐに教室を出た。
早く家に帰って思いきり泣きたかった。
は・・なんで?・・私の靴箱の前に圭人がいた。
私は泣き腫らした目を見られたくなくて咄嗟に近くの廊下の壁に隠れた。
せっかく早目に教室を出たのに後から教室を出た生徒達で靴箱の前は溢れてた。
圭人に気付いた女子生徒達が嬉しそうに話かけていた。
圭人も愛想よく応えてた・・時々、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
他の女の子と楽しそうに会話する圭人なんて見たくなかった・・そんな姿すら胸が痛――
「白川さん、ここで何してるの?」
へ?突然声をかけられて思わず声のした方へ振り向いた。
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