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「・・美術部の引継ぎだなんて嘘・・言わないで本当のこと言って・・欲しかった」 「本当だよ・・俺、千雪に嘘なんて言ってないよ」 圭人は何時もの穏やかで優しい目で私を見ながら言った。 「・・・・・」 どういう事?・・たった今・・・昼休み女の人と会ってた事を認めてて嘘をついてないって・・意味が分からない。 もう・・圭人の事・・全然分かんない・・・そう思ったら涙が溢れてきた。 「千雪?なんで泣くんだよ?はぁ~・・やっぱり誤解してたんだ。・・ねぇ、千雪、これから俺が言う事ちゃんと聞いて」 圭人は困ったように大きな溜息をついて・・私の頬を伝う涙を指で拭いながら言った。 「今日、千雪が見た・・あの彼女が今、三年生で前の美術部の部長だった人だよ」 「え?・・あの人が・・前の部長?」 「そうだよ。女の人が部長って千雪の中では全くの想定外だった?・・それと、彼女には恋愛感情なんて微塵もないから安心して」 「・・そ、そうなんだ」 私は自分でもバカみたいに単純だとは思うが・・・圭人の言葉に心底安心した。 今までの猜疑心が嘘のように消えた。 そっか、あの女の人が前の部長だったん――うっ・・いや、安心してる場合じゃない・・・しまった・・つい・・感情的になってしまって・・圭人に告白紛いの事を言ってしまったような気がする。 ・・迂闊にも涙まで流してしまった。 圭人は・・・私の気持ちに気付いてしまっただろうか? なんだか凄く不味い気がする・・・家に帰ろう・・圭人に何か言われる前に。 私はソファ―から――ううっ・・立ち上がれない・・圭人が私の足をしっかりホ―ルドしてた。 「あ、あの・・圭人、話も終わったみたいだし・・私、家に帰りたい――」 「何、言ってるの話はまだ済んでないよ」 「・・へ?」 話は済んでないって・・これ以上・・私に何の話があるというの―― 「ねぇ・・千雪、俺、千雪が俺と同じ高校に入学したら・・・お願いしたかった事があるんだ」 ・・私は圭人の顔を見る事が出来なかった。 圭人のお願いって言葉に・・嫌な予感しかしなかった。 やっぱり・・私の気持ち・・圭人に気付かれちゃったのかな?圭人にとって私の気持ちなんて・・・きっと迷惑だ。 もう・・圭人に近付くなとか・・登下校・・別にしてくれとか・・お昼も一緒に食べるの止めようとか・・言われちゃうのかな・・私の頭にはそんな・・悲しい事しか浮かばなかった。 私は・・また、溢れそうになる涙を必死に絶えた。 「千雪、これ見て・・」 圭人は私に自分のスマホを差し出した。
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