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差し出されたスマホには何かの画像が表示されてた。
何・・絵?・・画像が絵なのは分かったが・・まだ描いてる途中らしく何の絵かは分からなかった。
「これ・・今、俺が描いてる絵なんだ。今度の美術展に出展しようと思ってる」
「・・そう・・なんだ」
ダ、ダメだ・・圭人の考えてる事が全く分からない。
私にお願いがあるって言っときながら・・何で突然・・絵の話なの?
「まだ構図の段階だけど・・これ・・千雪の絵なんだ。・・黙って描いてごめん。・・俺、千雪が入学したらどうしても千雪の絵を描くって決めてたんだ。・・だから、千雪の絵を描く事、許してくれないかな?」
え・・っと・・頭が上手く回らない・・・今日は余りにも予想外の事が続き過ぎて頭の中が整理出来ない。
確か・・私の絵を描きたい・・そう言われたような気がするが・・・聞き間違いだろうか?いや、空耳かもしれない・・・圭人が私の絵なんか描く筈がない・・しかも美術展に出す絵だなんて――
「千雪、人の話、ちゃんと聞いてるの?」
「あ・・うん、聞いてるよ」
「じゃ、俺が千雪の絵、描くの許してくれるよね」
圭人の話を聞くには聞いたけど・・・返事ができるまで理解が追い付いてなかった。
絵を描くのを許してくれって・・・やっぱり・・私を描くって事だよね?
「・・私の絵って・・私を描くって事?」
「そうだよ、千雪の絵、俺に描かせて欲しい」
私は・・やっと圭人の言ってる事が飲み込めた・・圭人には悪いが無理だ。
「圭人・・ごめん・・私には絵のモデルなんて無理だよ。圭人だったら可愛い子や綺麗な子が沢山、絵のモデルやってくれる――」
「それじゃあ意味ないよ。俺が描きたいのは千雪なんだから」
うっ・・圭人・・その顔は反則だよ・・息を飲む程・・綺麗で真剣な圭人の顔に下から見上げられて私は言葉がでなかった。
「・・・・・」
いや・・やっぱ・・ダメだ・・私なんか描いたら圭人が恥をかいてしまう。
小さい頃からどっちかっていうと圭人より私の方が男の子みたいだった。
細身の圭人に対して私は・・良く言えばぽっちゃり・・悪くてもデブとまではいかなかったけど同世代の子供達より背もあって女の子にしては体格が良かった。
今ではすっかり逆転してしまったけど。
圭人が虐められると自分より年上であろうと関係なく立ち向かって・・・守ってた。
絵のモデルってもっと・・こう・・なんか細身で儚げな感じで・・私とは正反対な――
「千雪、ちょっと待ってて」
圭人は私の足から腕を外して立ち上がると机の側にある棚に向かった。
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