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陽と理兎
幸い、学校までの距離は近く、私はギリギリ始業時間に滑り込むことができた。
担任の先生と学年主任の先生、二人の出迎えを受けて教室へと案内される。
「お前ら、静かにしろ! 転校生の紹介をするぞ」
「隣町から来ました、花咲陽です。よろしくお願いします」
「ようこそ花咲さん。この学校の生徒会長をしています、安西虎太郎と言います。よろしくお願いします」
そう言って私たちがいる教壇の方へ歩いてきたのは、さっき私に道を教えてくれた彼だった。私より先に学校へ着いたのだろうか。それにしては、途中で追い抜かれた記憶がない。
私が怪訝そうにしていると、突然廊下から大声が上がった。
「あの、転校生さん! 転校生さんいませんか!?」
「理兎、声が大きい! 転校生ならうちのクラスだ」
安西くん――いや、虎太郎くんの声を合図にガラリと引き戸が開いて、赤い眼鏡をかけた彼が入ってきた。
「兄さん、大声出してごめんなさい」
「花咲さん、紹介するよ。双子の弟で安西理兎だ」
「ええと花咲さん、これ落とし物……」
彼――いや、理兎くんの手には私のスマホがあった。彼を避けて転んだとき、落としてしまったらしい。
私はそれを受け取りながら、二人の男の子を交互に見比べていた。どちらも整った顔立ちをしている。けれど、なぜだろう、理兎くんのほうが落ち着く声をしていると思った。
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