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理兎くんは、スマホを持ってきた時の大声がウソのように控えめなしゃべり方をする。
そんなことを考えていたら、理兎くんは体育館のほうを見たまま動かなくなった。
「どうしたの、理兎くん?」
「ゲーセン行きたい」
「はあ?」
「早退しちゃおうかな」
突然の言葉に、私は戸惑った。ゲーセンって、ゲームセンターのことだよね?
何をしに行くんだろう。プリクラ……を男子がやるとは思えないから、UFOキャッチャーとかやるんだろうか。
「って言うか理兎くん! 学校を抜け出すなんて、不良みたいじゃない。ダメだよ、そういうの」
「理兎でいいよ、花咲さん」
「んなっ!?」
これまた急な切り替えしに、私は戸惑う。
「僕のことは理兎でいいし、兄さんのことも虎太郎でいい」
「勝手に決めちゃっていいの?」
「兄さんだけ『くん』付けしたら、たぶん拗ねるし」
そういうものかな? 双子ってよく分からないし、そもそも理兎くんとも今朝出会ったばかりだ。
でも、本人が呼べって言うならいいかも知れない……
「じゃ、じゃあ私のことも陽でいいよ。よろしくね、理兎」
「うん!」
それまでうつむき気味だった理兎が、顔を上げて笑う。なんだよ、まぶしいなあ。そんな顔もできるんじゃんか。
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