10章 7月7日

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「なに笑ってんの?」 「んー…」 晶さんは俺の問い掛けにふふ、と笑い返しながら俺に抱き付いて胸に潜り込んだ。 「なに?何がおかしいの?」 潜り込んだままクスクスと小さく笑い続ける。 「晶さん?」 「んー…あのね」 「うん」 「人気俳優の藤沢 聖夜が恋人のオナニー見たいって駄々こねた。って週刊誌に売ったらどうなるのかなって…思ったら笑えたの」 晶さんは白状しながら笑い続けた。 「……鬼畜だ」 「うん、食いぶち困ったら売る」 「……ヒドイ」 「ふふ」 「見ないで売られるくらいならオナニー見てから売られないと割に合わないっ…」 「だね」 「うん。見せろっ!オナニー見せろっ!」 笑う晶さんを俺はぎゅうぎゅうに抱き締めてそう訴えていた。 静かな暗い部屋でしきりに抱き合ったあとのこの余韻が一番大好きだ── セックスをしているよりも一番晶さんとの心の距離を近くに感じる一時…… 他愛もない言葉を交わし冗談を言って笑いながら思いきり抱き締め合う。 俺はすごく幸せな時を実感している。 ・ ふざけながら笑う俺を晶さんはふと見上げて見つめた。 「んな、かわいい顔したらまたヤるよ?」 「……うん」 「こら、誘惑するな」 晶さんは俺を見上げながら絡めた素足をすりすりしてくる。 ベットの脇には買いだめしたらしいゴムのセット。それを目にしながら俺は、晶さんを抱き締める。 俺との夜を考えながら彼女が自ら購入した避妊具。 どんな顔して買ったんだろう?──なんて想像も、もはや俺の楽しみの一つになりつつある。 「12個入りの三セットか…すぐなくなっちゃうね?」 「……ぷっ…うん、だね」 俺の言葉に笑いながら晶さんはキスをしてきた。 ベットの中の彼女は時に妖艶で時に少女でたまに少年っぽい悪戯な表情を魅せて俺をドキッとさせる。 枕元の窓から差し込む月の光りを照明代わりにして、薄明かりの中で見る晶さんはすごく綺麗だとこの時俺は感じていた… 半身を起こして俺に覆い被さり甘いキスをする晶さんの後ろにスタジオでのセットを思い浮かべる。 月夜の逢瀬── 愛しくて 逢いたくて 切に願いながら 叶わぬ恋 想い人を慕いながら その女性(ひと)の影を追い求め、捕まえてもなおすり抜ける腕を絡めて引き戻す── それこそ藤壺の衣装を纏ったぬばたまのような長い黒髪の晶さんを俺は想像した…
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