20人が本棚に入れています
本棚に追加
「お、おい、君! 大丈夫か?」
再度の溝呂木の安否確認。男のワナワナしていた体の動きが止まった。そして、徐に上半身を上げて溝呂木の方を振り向いた。顎がまだわずかに震えているが、表情を窺う限りだいぶ落ち着いている。一見すると髪は転倒した際に乱れてボサボサになってはいるが、凛として整った眉毛と鋭さを持った一重瞼が印象的な、クールな感のある青年にも見えた。だが、そのクールなイメージもほんの一時だけ。
「だ、大丈夫、ですって?」
男の方が溝呂木に向かって初めて口を開いた。
「え? ああ、大丈夫なのか?」
溝呂木はそう言うと自らの手を男の肩に持っていこうとした。すると男はその手を払いのけ、顔をクシャクシャにして泣き出した。
最初のコメントを投稿しよう!