<Insanity and sanity>

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「お、おい、君! 大丈夫か?」  再度の溝呂木の安否確認。男のワナワナしていた体の動きが止まった。そして、徐に上半身を上げて溝呂木の方を振り向いた。顎がまだわずかに震えているが、表情を窺う限りだいぶ落ち着いている。一見すると髪は転倒した際に乱れてボサボサになってはいるが、凛として整った眉毛と鋭さを持った一重瞼が印象的な、クールな感のある青年にも見えた。だが、そのクールなイメージもほんの一時だけ。 「だ、大丈夫、ですって?」  男の方が溝呂木に向かって初めて口を開いた。 「え? ああ、大丈夫なのか?」  溝呂木はそう言うと自らの手を男の肩に持っていこうとした。すると男はその手を払いのけ、顔をクシャクシャにして泣き出した。     
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