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あの日に出来なかった告白。もう諦めようと思った願い。そばにいられないと思った時の悲しさ。
優しくしてくれる翼。困っていると助けてくれる。いつも隣で笑っていてくれた。
全てが混ざって、本当の"好き"に出会えた気がする。
桜が散っていく寂しさや、咲いた瞬間の嬉しさや美しさ。恋色に染まったそれは、まるでわたしたちみたいで恥ずかしくなった。
「好きだった。ずっと、翼を見てた」
わたしは翼の手を取り、思いっきり引き寄せる。これは照れ隠し。
「うわ、と……っ!」
びっくりした翼がわたしの上に倒れ込む。それと同時に強い風が吹き、桜の花びらを舞い上げた。
「歩美」
「ん?」
「一緒に行こう。俺と一緒に歩いてください」
「うん」
一緒に……。
その言葉に、わたしはまた恋をする。最初に意識した時も、やっぱりその言葉で。
わたしは何度もその優しさに恋をした。
桜色に染まった頬。瞳にうつる花びら。翼を彩る桜に温かさをもらい、優しくなった風を感じる。
その優しさに包まれて、涙が止まらなくなった。
入学式。新しい高校。新しく始まる今日。
わたしたちは幼なじみから、恋人になり、新しい関係が始まった――――。
END
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