17/17
前へ
/17ページ
次へ
 あの日に出来なかった告白。もう諦めようと思った願い。そばにいられないと思った時の悲しさ。  優しくしてくれる翼。困っていると助けてくれる。いつも隣で笑っていてくれた。  全てが混ざって、本当の"好き"に出会えた気がする。  桜が散っていく寂しさや、咲いた瞬間の嬉しさや美しさ。恋色に染まったそれは、まるでわたしたちみたいで恥ずかしくなった。 「好きだった。ずっと、翼を見てた」  わたしは翼の手を取り、思いっきり引き寄せる。これは照れ隠し。 「うわ、と……っ!」  びっくりした翼がわたしの上に倒れ込む。それと同時に強い風が吹き、桜の花びらを舞い上げた。 「歩美」 「ん?」 「一緒に行こう。俺と一緒に歩いてください」 「うん」  一緒に……。  その言葉に、わたしはまた恋をする。最初に意識した時も、やっぱりその言葉で。  わたしは何度もその優しさに恋をした。  桜色に染まった頬。瞳にうつる花びら。翼を彩る桜に温かさをもらい、優しくなった風を感じる。  その優しさに包まれて、涙が止まらなくなった。  入学式。新しい高校。新しく始まる今日。  わたしたちは幼なじみから、恋人になり、新しい関係が始まった――――。    END
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加