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でも、新しくないものが一つ。
「なあなあ、歩美。同じクラスだなんて奇遇ですなぁ」
わたしにおちゃらけて言うあいつ、翼。近所に住んでいるというだけで、幼い頃から構われ続けてる。いわゆる幼なじみ。
同じクラスになってしまったという不運に、わたしは声が出せない。
百歩譲って、同じ高校を選んだのは許す。でも、どうして同じクラスで毎日見ている顔を見なければならないの。
わたしの決意が揺らぐ。普通に話しかけてくる翼が憎い。
ダメ。高校になったら、翼と距離を置くって決めたんだから。揺らいじゃダメ!
「歩美、なんか言ってよ」
「……話しかけないで」
「ちぇ、冷たいの!」
翼は飽きてしまったのか、わたしの席を離れる。
これでいい。
翼には翼の世界がある。幼なじみばかりに構ってないで、もっとたくさん付き合っていけばいい。
……彼女だっているんだから。
「彼女……」
本当は翼のことが好き。
ずっと好きで、だからこそ中学の卒業式に告白するつもりだった。幼なじみをやめて彼女になりたいって思ったから。
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