10人が本棚に入れています
本棚に追加
話が終わると薫子は目を細めて微笑を浮かべた。
その輪郭は次第に湯気の中に溶けていって、鷹取が手を伸ばすとそこにはもう誰の姿もなかった。
鷹取はしばし呆然としながら思いを馳せる。
(そうか、あいつはこの家を、そしてこの地を愛していてくれたんだ……)
自分だけが残されたのではない。
自分は薫子と一馬に、ここで生き続けることを託されたのだ。
自分ががここで頑張らなければ、二人の人生が報われない。
海と共に生きよう。
思い出に溢れたこの地を、再び甦えらせよう。
最初のコメントを投稿しよう!