水曜日は公園

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水曜日は公園

 辞めた理由はそんなに難しいことではない。  丘を登る途中の公園。空に面したブランコが景色に近づいたり遠ざかったり。今日は曇りに近い晴れで、青空より余計まぶしいけれど、目が回れば関係ない。  一人の時の癖、歌を口ずさむ。最近覚えた曲を今度は替え歌で。時間があるから。  たかしくんは美術部の見学で、彼は今日美術館には来ないって言ってたから、自転車は最後まで漕がなかった。  美術部を辞めて、最初の日に行ったのが美術館だったのは、偶然。彼に会ったのも偶然。  最初のうちは毎日は来てないんじゃないかとか、休みの日も来てるんじゃないかとか思っていたけど、どうやら彼は学校のある日、毎日来るらしい。ずっと絵を見たり描いたり。いっそ美術部に入ればいいのに、と思った。  一学年上の先輩がいなかったから、去年の夏三年生がいなくなって、なつめが部長になった。それからは毎日ちゃんと絵を描く部になって、デッサンとか、やってみたけどあまり上手くはいかなかった。描きたいものもあまり無かった。どこかに行きたいと思いながら美術室にいて、授業中みたい。  たかしくんは、彼は多分デッサンとかもするんだろうと思う。  空が一番近くなった時、景色が一昨日の絵みたいに見えた。空に雲が浮かんで、低い森と、飛び出した木みたいな高い建物が近くと遠くにある。桃色のベールがかかって、曇りなのにいつのまにか、夕暮れ。
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