宵闇の桜

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はらはら散る花びらはまるで 泣き虫な君の涙のよう 美しく闇に舞い散る 夜を彩る桜色が 手を繋ぎ歩く二人を飲み込んでゆく 一歩、また一歩 この道を引き返せば、元の日常が待っている けれどお互い、言い出せずにいるのは 覚悟の上? それとも弱さ? お願いだから そんな顔して笑わないで いまから俺は、君を連れ去る その覚悟を 繋いだ指先の震えを 俺の弱さを どうか止めてほしい、なんて言ったら君はまた 泣き腫らした目で笑うんだろうな 散る花びらが君の涙に吸い付く 立ち止まり、それをゆっくりと剥がしてやると 少し震える君の頬 涙目が不器用に笑った 暖かくて、愛おしくて 今にも壊れそうに、か弱くて 思わず抱きしめた ごめんね。 俺はやっぱり、君の全てが欲しい 哀しみも喜びも。 そのためならどんな犠牲も厭わない 「行こう」 強く手を引くと一瞬躊躇いながらも 桜のなか、君は確かに頷いた 一歩、また一歩。 二人はまた、桜に飲み込まれてゆく
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