31人が本棚に入れています
本棚に追加
「・・・・・こんな、馬鹿な」
それは勇者のつぶやきだったけれど、本来なら仲間達の誰の口から漏れてもおかしくない言葉だった。だがそれは、今は決して有り得ないことだった。
勇者は視線を巡らせた。地面では彼の仲間達が倒れている。彼らが息をしていないのは一目で分かった。
勇者は視線を転じた。
そこには、彼の仲間の一人であるマナベルが細い腕を胸の前で組んで笑っている。
勇者は動揺をあらわにして問いかけた。
「・・・・・な、何故だ? 何故、おまえがみんなを・・・・・」
「我は魔神」
「ま、魔神、だと?」
「そう、魔神メフィスト!」
驚きを隠せずに勇者が問い返すと、彼の仲間であるはずのマナベルは腕組みをしながら叫んだ。
「なぜ、だ」
完全に冷静さを失った顔で、勇者が言った。
「貴様は、魔神メフィストはついさっき俺達が倒したはずでは・・・・・」
マナベルの姿をした魔神は腕組みをして悠然と構え、勇者を睥睨しながら告げた。
「そう! 我はおぬしらに倒された!」
楽しげに魔神は続けた。
「と成り果てることもなく、消え失せたわ! ・・・・・ただし、我の分身体だがな!」
「ぶ、分身体だと!? ど、どういう――」
最初のコメントを投稿しよう!