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「我ほどの魔神となれば、そのくらい出来て当然なのだ!」
勇者の悲鳴を、魔神は強い口調で抑えつけた。
「我が本体はかって邪神との戦いで完全に消滅しておる! だから、今まで分身体を戦わせていたのだ!」
「で、では、マナベルは・・・・・?」
小刻みに震えながら、勇者がささやくような声で言った。
「光栄に思うがよい! 我の新たな器として選んでやったのだ!」
無情にも、勇者の言葉に魔神はそう答えた。
「本来なら、勇者であるおぬしをと思ったが、それではつまらぬからやめたのだ!」
「何故、俺ではないんだ?」
気がつくと、勇者はそう尋ねていた。
「ううん? なんだ、おぬし、そちらの方がよかったか?」
勇者は首を振った。
その時の勇者には、何かを考えるなんてことはできなかった。勇者には、ただ聞かれたことに答え、浮かんだ疑問をそのまま口にする程度の思考能力しか残っていなかった。
「おぬしを生かすのは、おぬしが勇者だからだ!」
と魔神は言った。
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