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「・・・・・あの時の夢を見たのか?」
いつのまにか、眠ってしまっていたらしい。とても辛くて苦しかった悲しい記憶。
「あっ、デューク!」
不意に少年が木陰から顔を出して、デュークに声をかけてきた。同じ村に住む自分より五つ年下の少年だ。
「どうしたんだよ? こんなところで?」
少年は小走りで近寄ってくると、両手を後ろに回しながらちょっと背伸びして、デュークの顔を覗き込んできた。
その顔を見て、デュークはこの村に戻ってきた時のことを思い出す。魔神に敗れ、絶望に打ち砕かれていた自分に、こうやって樹木を見上げる勇気をくれたのはこの少年だったことを――。
その時、分かった。
真の勇者とは自らではなく、むしろみんなに希望を沸き起こさせてくれる者なんだ、と・・・・・!!
「・・・・・そうだな」
ぼんやりと樹木を見つめていたデュークがつぶやいた。
「どうしたの? デューク」
「ソランがいるなら大丈夫だ」
「どういうこと?」
不思議そうに首を傾げているソランに、優しく微笑み返しながら、デュークはあの時、自分が目にした光景を話してあげた。
魔神に向かって駆けていくソランの姿。
それは決して幻なんかではないと、デュークは思った。
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