第1話 はじまりの嘘

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だから、彼が学校に来る時間は大抵、予鈴と本鈴の間という頃合だ。 (今日の授業はなんだったっけ…) 欠伸を噛み殺し、もやが掛かったような頭で考えていたハヤトだが、突然その頭に、がつんとした衝撃が響いた。 「あだっ!?」 走った痛みに思わず叫び、勢いよく後ろを振り返る。 彼の目に飛び込んできたのは、右手をチョップの形にしてこちらを見据え、ニヤリと笑った女子生徒であった。 どうやら彼女が掲げたままのこの右手チョップが、ハヤトの頭を捉えたらしい。 そのままひらひらと右手をなびかせて、 「おっはよ、ハヤト。相変わらずマヌケそーな顔してんね」 「なんだ、キョーコか…。無意味に人の頭を叩くなよ、驚くだろ」 「意味ならあるよ。そのマヌケ面から眠気を吹っ飛ばしてあげたんだ」 「余計なお世話だよ。まったくもう…」 「大方、また夜更かししてたんだろ?たっぷり寝ないと大きくなれないぞー?」 女子生徒は、自分の頭をポンポン触って、またニヤリと笑った。 この女子生徒、名前を佐々岡キョーコという。 美しく長い、栗色の髪の毛を、一括りに束ねてポニーテールに仕立てている。これが彼女のトレードマークなのだ。
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