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だから、彼が学校に来る時間は大抵、予鈴と本鈴の間という頃合だ。
(今日の授業はなんだったっけ…)
欠伸を噛み殺し、もやが掛かったような頭で考えていたハヤトだが、突然その頭に、がつんとした衝撃が響いた。
「あだっ!?」
走った痛みに思わず叫び、勢いよく後ろを振り返る。
彼の目に飛び込んできたのは、右手をチョップの形にしてこちらを見据え、ニヤリと笑った女子生徒であった。
どうやら彼女が掲げたままのこの右手チョップが、ハヤトの頭を捉えたらしい。
そのままひらひらと右手をなびかせて、
「おっはよ、ハヤト。相変わらずマヌケそーな顔してんね」
「なんだ、キョーコか…。無意味に人の頭を叩くなよ、驚くだろ」
「意味ならあるよ。そのマヌケ面から眠気を吹っ飛ばしてあげたんだ」
「余計なお世話だよ。まったくもう…」
「大方、また夜更かししてたんだろ?たっぷり寝ないと大きくなれないぞー?」
女子生徒は、自分の頭をポンポン触って、またニヤリと笑った。
この女子生徒、名前を佐々岡キョーコという。
美しく長い、栗色の髪の毛を、一括りに束ねてポニーテールに仕立てている。これが彼女のトレードマークなのだ。
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