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プロローグ
そのクラスに在籍している生徒ならば、雨宮ハヤトと佐々岡キョーコの二人組を知らぬ者はいないだろう。
県立・稲穂が丘高等学校は、八十年の伝統と歴史を持つ、由緒ある公立高校で、男子の制服はブレザー、女子の制服はセーラー服と、定番ながらも洗練されたデザインの制服は生徒の間でも人気が高い。
その高校の、二年B組。
生徒の誰かが、
「いつも一緒にいるのを見るッスよ。休み時間は大体二人でお喋りしてるし…なんというか、目立つんスよねぇ」
と言えば、また別の誰かが、
「勘だけど、アレは絶対付き合ってるよ!証拠なんてないけど…ううん、アタシの目に狂いはないよ!間違いないもん!」
などと息巻く。
つまりは、それだけ噂される程に、その二人は仲が良いのである。
仲が良い男女というのは、どんな学校のどんなクラスを覗いてみても、大抵一組はいるものだ。
そして恋バナと言えば、華の高校生たちにとっては格好の話題となる。
何組の誰それがあのクラスの誰々と付き合っている、などというのは、学生生活を経験した者ならば一度は耳にしたことがあるはずだ。
御多分に洩れずこのクラスでも、二人の間柄に関しては、実に多くの憶測が飛び交った。
中には、直接彼らのところへ赴いて、事の真偽を問いただしに行った強者もいたという。
(二人は、恋人同士なのか?)
クラスの皆の関心は、全てこの一点に尽きていたといえる。
だが、彼らの答えは、いつも決まって同じであった。
「はあ?ないない。どうしてボクが、こんなヤツを彼女にしないといけないのさ?」
「いやぁ…ウチにだって、選ぶ権利ってあるからさ。彼氏にするなら、もっとマシな男子にしたいかな!」
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