裏切りの女神

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「小鳥!そらこっちだよ!」 聞きなれた声、本部の『窓』が開く。アベルは鳥のようにコクピットへと、船の天井からかけてある遊具にちょこんとまる。 「ただいま」 「どうだった、地球の様子は」 温厚なアルザーは、安堵したように表情をほころばせた。だがすぐに曇った。 「エリスはどうした?一緒に帰ってこなかったのか」 白銀の、鋼の翼が動く。自分が可愛がる小鳥たちの、かたわれが帰ってきていないのに不安を感じているのだ。人が、自分のペットが約束の時間に戻らないときに感じる、あの焦燥感と同じように。 「うん。きっとあのへんにいるよ」 母船のはるか彼方ー地球に。その海に。ここにいるアルザーが僕たちに与えた透明な羽があるから、僕もエリスも、この宇宙を飛ぶことができる。 いまはもう、大気がなくても苦しく感じない。 少なくとも僕は。
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