0人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「小鳥!そらこっちだよ!」
聞きなれた声、本部の『窓』が開く。アベルは鳥のようにコクピットへと、船の天井からかけてある遊具にちょこんとまる。
「ただいま」
「どうだった、地球の様子は」
温厚なアルザーは、安堵したように表情をほころばせた。だがすぐに曇った。
「エリスはどうした?一緒に帰ってこなかったのか」
白銀の、鋼の翼が動く。自分が可愛がる小鳥たちの、かたわれが帰ってきていないのに不安を感じているのだ。人が、自分のペットが約束の時間に戻らないときに感じる、あの焦燥感と同じように。
「うん。きっとあのへんにいるよ」
母船のはるか彼方ー地球に。その海に。ここにいるアルザーが僕たちに与えた透明な羽があるから、僕もエリスも、この宇宙を飛ぶことができる。
いまはもう、大気がなくても苦しく感じない。
少なくとも僕は。
最初のコメントを投稿しよう!