小鳥たちの主人(あるじ)

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「アベル!どした、ぼーっとして」 ラズに思い切り腕を引っ張られ、『ロード(道)』に引き戻される。 足元には、足を取られたら人間はひとたまりもない『罠』が、無数の星々に交じって浮かんでいる。アベルはようやく自分がトラップ域へと逸れるところだったことに気が付いた。 「ごめん、助かったラズ」 「なあに、お前やエリスがウサギ罠にかかっちまったらさ、アルザーが怒鳴り込んでくるからな」 褐色に近い短い髪を掻きながら軽口をたたくラズと、『ロード』に沿って飛ぶ。地球と月とーさらに彼方をつなぐ、白鋼の翼竜族が整備した道だ。アルザーの穏やかな声が早く聞きたい。 「なあラズ、そういえば地球で」 先を行くラズを見上げたときだった。 「どうした?」 「――アイラ?」 上空に見知った仲間が浮かんでいた。でも、返事はない。 「ありゃだめだ。本部を狙うやつのトラップに引っかかったんだ。かわいそうに」 「助からないの」 「ごめんな、アベル」 謝罪の言葉と、 「自分の持ち物以外の人間を助けると、あとあとやっかいでね」
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