寝耳に水だった。

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 それから教室について、かったるい説明を聞いた後、必修科目や選択科目を早苗に教える。一応説明はあったが、十分ではなく、履修の手引きを読み込まないと分からないようになっている。私が、こういうところ、しっかりしていて、早苗はいいかげんだから、この関係が成り立つんだろうな。 「ありがとう。あたし、こういう分厚いの、隅々まで読むの苦手でさ」 「いいの、私も人に教えたりすると、自分で忘れないから」 「本当は、自分でしっかりしないといけないんだけどね。沙織のおかげで助かる」  こいつ、可愛い上に、性格良いとか超人かよ。   「沙織さー、そう言えばサークルとか入らないの」 「うーん、どうかな。ユルいのがいいや」  文芸部に入っていたのは、緩いなれ合いが欲しかったから。周囲が公募とかばんばん出していたら、きっと入らなかった。部室で漫画やら小説やら読んで、たまに思い立ったようにポエムなんて書いてさ。そういう、気ままなところがいい。  再び、花吹雪。へらへらした男が、新入生歓迎と書かれたプラカードを持って、ひっきりなしに絡んで来る。そして、いっつも早苗相手にだ。まあ、当然だよね。  校内じゅうを駆けずり回ったが、目ぼしいものはなかった。それは早苗もだった。 「演劇サークルあったよ」 「うーん、けれど、あたし、映像制作をやってみたくてさ。ここの演劇サークル、舞台特化なんだよね。沙織こそ、文芸部あったじゃん」 「あそこはガチだから息苦しい」  キャンパス内のカフェテラス。安っぽい味のケーキを食べながらの休憩。  まあ、なかったらなかったでいいや。という具合に私は思っていたけど。
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