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王子様、現る。
「あ、連絡をした二年の井川徹です」
と、低い声。コメントに自己紹介があったから知っていたけれど、男の人。いいや、王子様だ。見上げるほど高い背丈。清潔感はあるのに、軽い印象じゃない。しかも一年先輩だ。まさに一目惚れ、というやつ。
「あ、あ、ありがとうございます。天城沙織です」
早苗とは違って、私はどもりながらの自己紹介。正直、先輩を前に、緊張せずにいられるものか。
たどたどしい私の後に、フォローなのか、早苗は「実質、沙織がほとんどやっているようなものだけどね」と付け加える。たしかに、サイトの制作はほとんど、わたしがやったけれど、それ以前に、活動らしい活動をしていない。だから、部室も用意できなくて、ファミレスで打ち合わせをしている。
「興味を持っていただいて、ありがとうございます。ちなみに、どうして興味を持ったんですか。やっぱり、あの脚本ですか」
こくり、と頷く井川先輩。経緯から考えれば、予想は出来たけれど、心の中では、喜びの舞を踊っている。
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