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最初は自分でも気付かなかったが、ごく親しい友人から指摘されて、そういえば、と気付いた。でも指摘してきたのはそのごく親しい友人だけだ。それくらい私の指輪に触れる動作は自然で、無意識的なものなのだろう。この癖は平田君は気付いていないと思うけど、もし彼に話したら心理学者然として、「それは父という男性性の象徴なるものを、無意識に排除して、新たな、自分の手で獲得する男性を求めている象徴的行為なのだ」とか言うのだろうか。なんか想像がつく。
ひとしきり指輪をもてあそんで、落ち着きを取り戻したのか、私はふぅと息をつき、話を続ける。
「ねぇ、平田君。」
「ん、何だい。」
「やっぱり、私、それじゃぁ、その人に告白するべきなのかな?」
「・・・・・・」
急に平田君は黙り込んだ。彼の気持ちは分かる。私だってあるいは同じ気持ちなのだ。私たちは、友人と恋人との間の薄い線を尊重しあっている・・・。
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