祖母・母・娘

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 迷惑かけたうえに朝飯までもらっては、申し訳ない。 「いや、帰るよ。このお詫びは後日あらためて」  そう言いつつ立ち上がろうとしたが、足もとがふらついた。  あれ、うまく立てない。 「まだ酔いが残ってるみたいね。危ないから食べてから帰りなよ。お祖母ちゃんも賑やかなのが好きだからさ」  いや帰るよ、と口にする前にお祖母さんが戻ってくる。 「はい、値千金」  丸盆に載せて持ってきたものはペットボトルのスポーツドリンクだった。  いただいて御礼を言うと、すぐさま蓋を開けてラッパ飲みする。  染みわたる──ありがたい、心からそう思った。 「あらあら、コップがあるのに。よほど喉が渇いていたのね」 手で口を隠しながらころころと笑う姿、どことなく品が、いや、気品がある方だな。  言われて気がつく、丸盆にはコップも載っていた。  こちらの育ちを露呈したみたいで、恥ずかしい。 「酔い醒ましに良いもの用意するから、召し上がってきなさい」 「はい」  断れないというか、断ってはいけない気がしたので、素直に返事してしまった。 「じゃあ、シャワー浴びて着替えてくるね。三ちゃんも浴びる?」 「うっさい、さっさといけ」  つい乱暴に言ってしまったが、お祖母さんはころころと笑い、佐野さんも平気な顔で去っていく。 「すいません」 「いいのよ、そんなの。しかしまぁ……へぇ……」  控えめだが見定められている目で見られる。何を納得したのだろうか。 「支度が終わるまでもう少しかかるから、休んでなさい。出来たら呼びますからね」  それだけ言うとふたたび、おそらく台所に行ったのだろう。  残された私はやることがなく、ぼーっとしていると、はたと気づいた。昨夜の支払いはどうしたのだろう。  あらためて財布を確認すると、お金は減っていない。未払いなのか、それとも佐野さんが払ってくれたのか。  いかん、それを確認しないと帰れない。  とはいえ本人はシャワー中、さすがに聞きに行けない。やはり残るしかないか。  支度ができたと呼ばれたので、声のする方に向かう。  ダイニングテーブルに三人分の食事が用意してある。  御飯、味噌汁、アジの開き、漬け物、それに納豆と生卵。  いいなぁ、純和風で器も盛りつけも、まるで料亭のようで素敵だ。 「さぁおあがり、御口に合うといいけど」 「すいません、いただきます」 「「いただきます」」  シャワーを終えて着替えた佐野さんと向い合せで食事をはじめる。さてどのタイミングで訊ねようか。
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