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2018/04/初旬
「それがノブと知り合ったきっかけなのか」
「そう、それから半年くらい経ってからかな、探偵になりましたよって現れたのは」
「探偵ってそんな簡単になれるのかい」
「うんとね詳しくは知らないんだけど、探偵の免許ってのは無いから誰でもなれるんだって。だけどそういう仕事をするって警察に届出は出さないといけないの。ノブはむかしヤンチャしててね、その時知り合った刑事に助けてもらったらしいの」
「私と千秋と知り合ったのは、そのちょっと前かな」
「そうだね、たしか盆休みの頃だっけ」
4月初旬、私と佐野千秋は2人で呑んだ後の夜道を歩いていた。
いつぞやの天爵との件から、私達はときどき[隠れ家]という居酒屋で2人で呑むようになっていた。
今夜のサケのアテは千秋とノブの馴れ初めであったが、なかなかドラマチックな話だったのでのめり込んでいたら、いつの間にやら今日が終わりかけていたので、お開きという事になり、その帰りである。
「そんな間柄なら千秋に懐くのもわかるよ。今でも舎弟と姐さんの関係なのかい」
「まあ特に解消はしていないけど、人聞き悪いから[ちあきサン]と呼ぶようには言ってあるわ」
千秋に懐き過ぎるが故なのだろうか、ノブは私に当たりが強い。保っちゃんや重ちゃんにもつっけんどんな感じはするが、私にはさらに冷たい気がする。
今日の話にはたくさんの登場人物がいたが、ノブ以外の人達は私は知らない。会ったこともない。
千秋には千秋の世界があるんだなとだけは実感した。
「あ、ここら辺だっけ」
「なにが」
「千秋に会う前かな、呑んだ帰りにここを通ったらOLらしいのに追いついてね、痴漢と間違えられたくなかったから追い抜こうとしたら、そいつに振り向き様にビンタされたんだよ。めちゃくちゃ痛かったな」
「……それって何年前のこと」
「2年くらい前かな。まあ当時は全身黒づくめの格好だから、仕方ないと思っているよ」
「それがあって、わりと明るめの格好をするようになったの」
「いや、その後4月くらいに別のところで職質されたんで、それでやっと懲りてからだな」
くすくすと笑ってた千秋が、不意に私の頬をさすり、
「痛いの痛いの飛んでけー」
「なに今さらやってんだ、もう痛くないよ」
怪訝そうな顔をする私を見て、千秋は大笑いをする、止まりそうもない。
なにがツボだったのか私にはわからないままだった。
ーー 了 ーー
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