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鯛が釣れたというのと、ちょうどお昼時が重なったので、食事をすることになった。
釣ったばかりのアジを船長とマスターと息子さんが捌いて、刺し身とタタキを作ってくれる。
「おお、美味そう。それじゃ乾杯しよか」
「かんばーい」
めいめいに缶ビール、缶チューハイなどを片手に美味しそうに呑み始める。
今日は運転手なので酒が飲めない私は、ママさんが握ってきてくれたおにぎり片手にタタキをご相伴にあずかる。美味いねぇ、葱と生姜が効いてるわ。
「三ちゃん呑んでるぅ」
いつの間にやら持ち込んでいた白ワインのボトル片手に、千秋が楽しそうに訊いてくるが、絶対分かっていってるよな。
「あ、そっか、運転手だもんねぇ、残念でしたぁ、あータタキと辛口の白ワイン合うわー、美味しー」
「チューハイにも合うっすよ、自分で釣ったばかりのアジをツマミに呑むってサイコーっすねー」
千秋に便乗してノブもからかってくる。ふんだ、ご飯にだって合うわ。
運転手組のママさんと私は、刺し身に割り箸をのばし、生姜醤油をちょんと付けて口に運んでからおにぎりを食べる。うん、美味しい。ほら美味しい。絶対美味しい。
「お土産分は残っているから、昼からは狙いを変えようか」
鯛が釣れたことによって興味が変わったらしい。マスターのひと言で昼からはルアー釣りになった。
「狙いはなににする」
「何でもいいよ、釣れればさ」
会話の意味が分からないので、保っちゃんに訊ねる。
「釣りって、狙った種類の魚を釣るんだよ。アジならアジ、サワラならサワラってね。それ以外が釣れると外道といってリリースしてやんの」
「もったいない」
「なんでも獲ったら漁になっちゃうからな、釣りはスポーツなの」
──保っちゃんのクチからスポーツという単語が出てきたので、あらまと思う。さっきまでの姿はどうみてもスポーツマンとはかけ離れていたからな。
「まあ今日はレジャーだから、そう目くじらを立てなくてもいいさ」
つまり釣れりゃなんでもいいのか。
「初心者にはありがたいね、なんか釣れるように頑張るよ」
もうすでにめいめいに船のあちこちに陣取って釣り始めている。
私も先程の場所である船先に移動してみたら、そこには千秋とノブがすでにいた。
「場所変えかい」
「ルアーなら餌づけの必要無いからね、糸が引っ掛からないように広がろうとおもって」
「姐さんと一緒」
ふたりの気づかいを考えると、私は別の場所にした方がいいか。保っちゃんの横が空いている、揺れる船に転ばないよう移動すると、周りに気をつけてルアーを投げて釣りをはじめた。
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