0人が本棚に入れています
本棚に追加
-その後-
それから研次は岐士の居る世界へと戻った。
岐士と再び対面し、彼が労(ねぎら)いの言葉をかけると研次は堰を切ったように号泣した。
それにはゴキブリとして生きた境遇の辛さと不可能に思えたそれからの解放を実感した安堵が混じっていた。
元々、真知子の運命に暴漢との縁など存在しない。
それは研次が我が儘(まま)を通し、目的を達せずにぐすぐずとしていたために彼の罪業が賊を呼び寄せたのだ。
岐士の懸念していた真知子が辛い思いをすることになるかもしれないと言ったのはこの事だった。
それが結果として研次自身を救う呼び水になったのだが岐士はそれを敢えて話さなかった。その経験で彼は悔い改める気持ちを掴み、やっと自分の良心に耳を傾けたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!