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「南川さん」
入口とは反対側の扉から、同年代の落ち着いた物腰の男が入って来て匡哉に声を掛け、俺にもにこやかに会釈をした
「ああどうも、倉木さん」
「蓮、バリエーション大会出場の最終選考に合格しましたよ。パテル資格である南川さんの身元調査もクリアしました」
「ああ、よかった!
じゃ、、、約束通り、彼との契約をお願いします」
「蓮も喜びますよ」
続いてこっちに顔を向けた、少しクセのある長めの黒い髪と彫りの深い顔立ちは、どこかで会ったことがある
「お久しぶりです、有鉗さん」
親しみを込めて手を差し出されたが、憶えがない
「すみません、失礼ながら、、、」
「ルーンヌィ・バレエスクールのコーディネーターをしています、倉木です。倉木慎」
「倉木、、、慎」
「南川さんから有鉗さんとお知り合いだと伺った時は驚きましたよ。お会い出来て光栄です」
匡哉が俺の背中を叩きながら、いたずらっぽく笑った
「倉木さん、実は彼にはまだこちらの珍しい制度を何も説明してないんですよ、連れて来た方が早いかなと思って」
「ああ、そうでしたか、それではレッスン風景を見ながら、、、どうぞおかけ下さい」
再び真っ赤な生地の座席に促されて、二人は俺を真ん中にして座った
階下のフロアでは手摺りに沿って整列した生徒達が、優雅なピアノの音に合わせてバーレッスンを始めている
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