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匡哉が身体を傾けてきて囁いた
「悠人、正面右のバー先頭、腕にオレンジ色のリボンつけてる子を俺の『クリエンテラ』に決めた」
「クリエンテラ?」
思わず声が出た
初めて聞く言葉だ
「クリエンテラとは簡単にいいますと経済的援助を受ける子のことです」
「経済援助? バレエスクールだろ? ここは」
再びフロアに目を向けると匡哉が示した少年が
爪先を床に滑らせるタンジュをしている
見たところまだ15、6だろうか
ふわふわした褐色の髪に空気をはらませて
跳躍を始めた
「ここにはバレエのプロを目指していながら経済的に困難を抱えている子達が集まっています。
、、、全員男子ではありますが、身体の大きさや身体的有利さによって、男性ソリストを目指す子と、ポワント(トウシューズを履いて爪先立ち)とに分けています」
「男子のポワントとは、、、まだ珍しいですね」
しかし一列に並んで動く姿は皆同じで、そこそこ基本のポジションが出来ている上に動きや角度がきちんと揃っていて整列とか整頓というものが好きな俺には目に心地良い
「彼らをプロとして世に出すチャンスを得るべく、我々スクール側がバレエに掛かる費用とその生活を援助して下さる方を募っているんです」
「俺もお客さんから紹介してもらったんだよ。初めて来たときはこういう世界知らないから戸惑ったんだけど、、、いわゆるパトロンってやつかなと思って、、、」
少し照れて話す匡哉は、パトロンと言う響きに気後れして俺に話すのを躊躇っていたのだろう
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