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圭介は意外な顔をしていた。
そんなこと思いも寄らなかったという顔だ。
この人、ほんと鈍すぎる。
「もうっ、そんな顔しないでよ。傷つくな」
「だってさ」
「でもダメだと思ってた。理恵子の方があたしよりずっと素敵だし、理恵子といる時の圭介の顔、全然違うから。東京に行ったのも、ふたりを見ているのがつらかったから」
圭介は困惑していた。
おそらくあたしの告白をどう受け入れたらいいか悩んでいるのだろう。
本当にこの人はやさしくて誠実な人だ。
「というわけで、あたしの告白は終わりです。こんな美人にコクられて得意になってるでしょう?」
「そんなことは……」
ったく、こっちが冗談で終わらせようとしているんだから、冗談で返してくれればいいのに。
圭介が口を開いた。
「でも俺……」
その先は聞きたくなかった。
聞けば、きっと泣いてしまう。
だから、あわてて言った。
「圭介、今までどおり友だちでいてくれればうれしい。あたしが好きだったことは、懐かしい笑い話にしてくれると助かる」
圭介は少し考えると、ぽつりと言った。
「わかった」
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