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予想外の言葉だった。
どうしてあたしの恋愛のことを……!?
「あれから理恵子の婚約者のことをネットで調べたんだよ。函館の中学校教師、佐藤圭介。検索したらHPに野球部員と写っている写真がアップされていた。あんたが空港で目を輝かせて見てたのと同じ画像がな」
動揺を必死に隠した。
「……圭介は幼なじみで友達よ」
「でも好きなんだろう?」
「……たとえそうだとしても相手のために身を引くのが人間でしょう?」
「俺はそうは思わない。本当に相手のことが好きなら奪うべきだ」
今までのあたしにない考え方だった。
なぜか突き刺さって、あたしの心を揺さぶった。
決してお行儀の良いことではないけれど、人はそうやって幸せをつかんでいくものなのかもしれない。
だが、あわてて否定する。
「最低よ。そんなこと人として許されない」
「自分の気持ちに素直になることが悪いとは思わないけどな」
「だからって他人の幸せを壊していいの?」
「俺は後悔したくないんだ。4年前、理恵子を手放したのは失敗だった。だが取り戻せるチャンスがあるのなら出来るかぎりのことをしたい」
最後の言葉はあたしを打ちのめした。
何も返すことができなかった。
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