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吉岡のことで理恵子があたしの家に相談に来たのは同じ日の夜だった。
「クリスマスイブの日に達也が空港で待ってるっていうの。俺か圭介か、どっちかを選べって」
吉岡は勝負に出たようだ。
同じイブの日、理恵子は圭介と函館山のレストランで食事をする約束をしているらしい。
普通なら、結婚前の恋人たちが過ごす最高に幸せなクリスマスイブだ。
空港か? レストランか?
別れた男か? 婚約者か?
理恵子は取り乱し、憔悴しきっていた。
そんな理恵子とは対照的にあたしはすごく冷静だった。
「で、どうするのよ?」
「……止めないんだね。達也の所に行くなって言ってくれないんだね」
「だって、それは理恵子が決めることだから」
理恵子は黙り込んだ。
この期に及んで迷っている理恵子に憎しみを感じた。
これでは圭介が可哀想すぎる。
同時に、もしかしたら圭介が戻ってくるかもしれないという思いが頭をよぎった。
醜いあたしは理恵子の背中を押した。
「理恵子はまだ吉岡さんのことが好きなんだよ。だったら圭介と別れた方がいい。それにあたし、そんな人と圭介が結婚してほしくない」
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