クリスマスイブの夜に

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 クリスマスイブの日は、今にも雪が降り出しそうな曇り空だった。  街はクリスマスのイルミネーション一色で、プレゼントやケーキを持ったたくさんの人が、白い息をはきながら、心をときめかせている。  一方、あたしは一日中落ち着かず、夕方、どうしても結果を見届けたくて、圭介たちが会う予定になっている函館山のレストランに向かった。  先日、理恵子の背中を押した罪悪感もあった。  もし、理恵子が吉岡を選んだら、圭介はどうなってしまうのだろう。  あたしは大好きな人の悲しみに荷担した、どうしようもない女だ。  平気な顔をして友だちを陥れる卑劣な女だ。  ロープウェイで上った展望台のすぐそばにレストランはあった。  眼下に輝く函館の夜景が見える。  カップルや家族連れがそのダイヤモンドのような光景に歓声を上げていた。  あたりには幸せが溢れ、寂しさや孤独な微塵もない。  圭介を探して、レストランの入口から中の様子をうかがった。  本日は完全予約制で、すでにたくさんの客がいる。  客たちの中、キャンドルが灯る窓際の席に圭介はいた。  夜景を見ながら、理恵子が来るのをひとりでポツンと待っている。  その表情はどこか堅く、恋人を待つ顔ではない。  圭介は理恵子と吉岡のことを知っているのだろうか?  あたしは、向かいの喫茶店の、圭介の姿がかろうじて見える席に座った。
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