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約束の時間が来た。
理恵子は来ない。
空港でスーツケースを持った理恵子が吉岡に駆け寄る姿が浮かんできた。
自分のしたことは棚に上げて、理恵子への怒りがわいてくる。
ウェイターが圭介の所に料理のことを聞きに来る姿が見えた。
圭介は「少し待ってほしい」と言っているようだ。
30分が経った。
依然として理恵子は来ない。
腕時計に目をやる圭介。
理恵子に電話しないのはなぜだろう?
1時間が経った。
圭介は飲み物にも口をつけず、ひたすら理恵子が来るのを待っている。
遠くからではっきりわからないが、その顔はどこか哀しそうだ。
「圭介……」
そうつぶやいた時、喫茶店の前を走ってくる女性の姿が見えた。
理恵子かと思い、あわてて目を懲らしたが、まったく違う人だった。
彼女は待ち合わせをしていた男の方に走っていく。
1時間半が経った。
圭介は意気消沈して肩を落としていた。
見ていられなかった。あまりにも残酷すぎる。
圭介の所に行こうと思った。
背中を押したのはあたしだが、結論を出したのは理恵子だ。
どちらの罪が重いかと言えば理恵子の方にある。
伝票を手に取って立ち上がった。
あんな顔をした圭介を放っておけない。
今、そばにいて、話を聞いてあげられるのはあたしだけだ!
あたしだけが力になれる!
その時だった。
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