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夜、あたしは元町公園に圭介を呼び出した。
ここも圭介とよく来た場所だ。
眼下には函館湾のイルミネーション。
空は灰色で重く、今にも雪が降ってきそうだ。
白い息を吐いて待っていると、圭介がやって来た。
「悪い、悪い、遅くなっちゃって」
「わざわざありがとね」
子供の頃からまったく変わっていない、いつもと同じ明るい笑顔。
でも、彼は愛する人のためにいつでも身を引けるしっかりした大人なんだ。
愛する人のことを優先して考えられるすごい人なんだ。
圭介にこんな一面があったのをあたしは知らなかった。
あたしの中にいたのは、頼りなくて、いつもバカなことをやってる中学・高校時代の圭介だった。
「で、どうしたんだ?」
いつもと違う雰囲気を感じたのか、圭介はすこし真面目な顔で言った。
あたしは大きく深呼吸をする。
「決着をつけに来たの」
「決着?」
「これから言うことは自分の気持ちに決着をつけるために言うことだから軽い気持ちで聞いて」
前に進むためには今までの自分と決別しなくてはならない。
あたしはこの結論をずっと保留にしてきた。
「あのね、あたしね、圭介のことがずっと好きだったんだ」
やっと言えた。
10年以上、胸につかえていたことをついに言ってしまった。
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