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翌日、あたしは再びホテルに行き、吉岡達也を呼び出した。
吉岡はすぐにティーラウンジにやって来た。
「あんたから呼び出されるとはな。俺にほれたか?」
「くだらない冗談はやめて」
相変わらずふざけた男だった。
こんなやつが理恵子を幸せに出来るわけがない。
飲み物が来ると本題を切り出した。
「理恵子のこと、どうするつもりよ?」
「どうするって、迎えに来たんだ」
「彼女はもうすぐ結婚するの。バカじゃないの?」
吉岡はコーヒーを一口飲む。
「確かに俺はバカだよ」
「え……?」
「真剣だからバカになれるんだ。他人にどう言われようと理恵子を手に入れたい」
「ムダよ。理恵子は圭介を愛してるんだから」
「そうでもなかったぞ。やり直したいと言ったら、あいつ揺れてた」
「それは一時的なものよ」
「俺は欲しいと思うものは何でも手に入れて来た。金、地位、女。それで理恵子が最高の女だと気づいた」
「子供ね。少しは大人になりなさい」
この男は欲しいものを買ってもらえなくて駄々をこねる子供と同じだ。
すると吉岡が意外なことを言ってきた。
「そういうあんたは、欲しいものがあっても指をくわえて見ているオトナだったな」
「どういうことよ?」
「理恵子の婚約者のこと、好きなんだろう?」
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