壱の巻 『君』との出会い

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時代は目まぐるしく変化している。 咲き誇る桜の木の下で、彼女はそんなことを思った。 街ゆく人々の姿も、街の様子も。瞬きしている間に脆く儚く変わってしまう。 (私も、いつかそう) 光を帯びた、淡い桜色のワンピース。漆黒の艶やかな髪。紅玉のように赤い瞳。 彼女は『人間』では無い。 とある街の公園に植えられた桜の木に宿る精霊だ。 元々彼女の桜の木は土手に植えられていたものを、公園が造られるときに移植したものである。 毎年同じ時期に花を咲かせ、人々を眺めてきたのだが...人というのは本当にわからないものだ。 同じ桜を見て、愛おしそうに目を細める者、声を殺して泣く者、切なそうに微笑む者。 終わりがあるから、輝ける期間が限られているから、彼らはあんなふうに沢山の感情を持てるのだろうか。 彼女にだってきっと終わりはある。だがそれは気の遠くなるほど先のことで、今はまだ永遠に近い時をさまよっている。
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