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時代は目まぐるしく変化している。
咲き誇る桜の木の下で、彼女はそんなことを思った。
街ゆく人々の姿も、街の様子も。瞬きしている間に脆く儚く変わってしまう。
(私も、いつかそう)
光を帯びた、淡い桜色のワンピース。漆黒の艶やかな髪。紅玉のように赤い瞳。
彼女は『人間』では無い。
とある街の公園に植えられた桜の木に宿る精霊だ。
元々彼女の桜の木は土手に植えられていたものを、公園が造られるときに移植したものである。
毎年同じ時期に花を咲かせ、人々を眺めてきたのだが...人というのは本当にわからないものだ。
同じ桜を見て、愛おしそうに目を細める者、声を殺して泣く者、切なそうに微笑む者。
終わりがあるから、輝ける期間が限られているから、彼らはあんなふうに沢山の感情を持てるのだろうか。
彼女にだってきっと終わりはある。だがそれは気の遠くなるほど先のことで、今はまだ永遠に近い時をさまよっている。
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