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あれからおよそ3ヶ月前が経ったが、私の本名はやはりクラス内では浸透せず、あだ名の「シャロ」で呼ばれることが定着してきた。たぶんみんな私の長ったらしい本名のことは忘れてしまっているのだろう。
しかし「自分の名前の由来」を語ったことで、自分の名前をクラスの全員に覚えてもらうことに成功した人も、もちろんいる。
その1番の成功者は、クラス担任の川口夏海先生だ。
年齢はたしか25歳だったと思う。真っ黒な髪を肩の上で切りそろえ、銀縁の眼鏡をかけている。白いシャツの上に灰色のセーター、下は黄緑色のロングスカートだ。教鞭を持ったら似合うかもしれない。性格はおっとりとしていて、年齢も生徒に近いためとても親しみやすい印象を受けた。
「自分の名前の由来」をテーマにした自己紹介の場を設けた張本人である彼女は、クラス全員の発表が終わった後に満を持して発表を行った。
その発表の内容は今でも1年2組の面々の記憶に深く刻まれている。
黒板に「川口夏海」と大きく書いてから、先生は自己紹介をスタートさせた。
「私の名前は川口夏海と言います。名前の由来ですが、これには2つあります。
1つは『誕生日が7月23日だから夏海』というものです。他人から覚えてもらいやすいので、なんだかんだ得をすることが多いかもしれませんね。
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