3人が本棚に入れています
本棚に追加
「私の名前はシャロじゃないよ」
その度に私は訂正した。
私にはうまく出来なかったことを彼女は完ぺきにこなしているように見えた。だからこの時私が彼女へ抱いていた思いは、正直に言って複雑なものだった。
「『シャロ』じゃなくて『シロ』。みんな私のことをそう呼ぶの」
しかし彼女は「シャロ」と呼ぶのを辞めなかった。
「だってあなた、イギリスのお姫様みたいにかわいいんだもの。シャーロットっぽい顔をしているよね」
そう言って満開の花のように笑う彼女の名前は「高岡彩」と言った。
学校の中で金色の髪が私ひとりでなくなると、クラス内での私に対する「外国人いじり」は露骨なほどあっさりとなくなった。むしろ彩と同じものを持つ私に、羨望の眼差しが向けられていると感じることすらあった。
また、彩があまりにも自信満々に私のことを「シャロ」と呼び続けるため、いつしかクラスのみんなも「シロ」というあだ名を忘れ、新しいあだ名で私のことを呼ぶようになった。
最初のうちは、彼女から声をかけられることに戸惑っていた私も、いつしか自分から彼女へ声をかけるようになった。私が一度心を開くと、2人の距離はみるみる縮まっていった。
最初のコメントを投稿しよう!