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「なぜクラスの人に自分のあだ名の由来を説明しなかったの?」とは、彩は聞いてこなかった。たぶん言わなくても伝わっているのだろう。
彩とはまだ1年半しか付き合いがないのに、こうして少ない言葉で通じ合えることが私には嬉しかった。こんな特別な友達ができるなんてことは、一昨年の私にも3年前の私にも全く想像できないことだった。
彩は私の人生の(その中でもとりわけ大切だと言われる時期の)1ページを見事に彩ってくれた。そう考えると、「彩」という名は彩にぴったりだ。
来年の今頃もこうしておしゃべりしながら散歩できたらいいな。私は心からそう願った。
「来年もこうして散歩できたらいいね」
まるで私の心の中を音読したように彩が言った。
「な、名前の由来って言えばさ」
恥ずかしくなった私は話の軌道を力づくで修正した。
「昨日会った川口先生の名前の由来って知ってる?」
彩は不満そうな顔をしているが、私は続ける。
「下の名前が『夏海』って言うんだけどね。あ、字は『夏』の『海』って書いて『夏海』って読むの。その由来がね、先生のお父さんが夏の浜辺でプロポーズしたからなんだって」
「へえ、なかなかロマンチックだね。今みたいな時間帯だったら人も少ないしいい雰囲気かも」
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