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前回の散歩の途中、彩と「名前の由来」について話しているときに、不意に頭の中にある映像が浮かんだ。その映像と、これまで得た数々の情報から、私は自身が事の真相に至ったことを悟った。今日はそれを確認するために、こうして彩と2人で物陰に潜んでいるのだ。
「ほんとに来るのかな、斎藤先生」
彩が不安そうな声を漏らした。
そういえば彩にはまだ一部の推理しか披露していなかった。
「来るはずだよ。誰にも見られない夏の海でやらなくちゃいけないことがあるはずだから」
「それはもう聞いたけど、なんでこの場所だってわかったの?」
「斎藤先生が川口先生に告白したのはこの水族館でのことだった。験を担ぐ斎藤先生ならその近くで川口先生に告白すると思う。あと、私たちの街で有名な浜辺って言ったらやっぱりここだしね」
「なるほどね。じゃあ日時を特定できたのはなんで?」
「ああ、それは彩には言ってなかったね。実は今日、川口先生の誕生日なんだ。川口先生のお父さんも、川口先生のお母さんの誕生日の朝にしたらしいよ」
彩が「ああ、そういうこと……!」と詠嘆の声を発した。
「でもシャロが他人の誕生日を覚えているなんて珍しいね」
思わず苦笑いになる。
「語呂合わせで簡単に覚えられるからね」
その時、大きなシフォンケーキ色の砂の上に、2つの長い影が落ちた。
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