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空では薄い雲が太陽から外れ、朝日に照らされた穏やかな海は波の模様に光っている。空から燦燦と降り注ぐ陽光と海面で反射したそれは、浜辺に向かい合って立つ2人を穏やかな黄色で包み込んだ。
より大きな影を持つ方が、懐から小さな深紅のケースを取り出した。不器用そうにその口を開くと、中からは小さな一等星が現れた。朝日を浴びて輝くそれは、ケースの元を飛び立って、桜色の爪をゆっくりと通り抜ける。
そして、2つの影は1つになった。
穏やかな潮風が、控えめな白波が、そしてが情熱的な夏の太陽が2人の特別な瞬間を祝福していた。その光景と色彩を私は生涯忘れることはないだろう。
「やったやった!」
はしゃいだ彩が私に飛びついてきた。
鳥肌が遅れてやってくる。私も幸せな気持ちに包まれて、彩に抱擁を返した。
「うん。よかった」
もう一度美しい光景を目に焼き付けようと浜辺の方に首を回した。
「あ、やば」
「え、なに?」
私は彩の手を掴み、走り出した。
「もしかして、見つかっちゃった!?」
「目が合っちゃった!」
「どじー!」
「彩が大きな声出すからでしょー!」
私と彩は水族館の駐輪場に停めて置いた自転車に同時にまたがる。
嬉しくて、恥ずかしくて、高ぶった感情をそのままに、私は自転車のペダルを全力で踏みしめた。
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