2. 夏休みの宿題について

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2. 夏休みの宿題について

 季節は巡って夏。  青い浜辺に臨むこの箱浦市は活気を持ってその季節を迎えた。浜辺にあるこの街で唯一の教会も、商店街に並ぶ店々も強い日差しの中で互いに競い合うように輝いて見えた。  小学5年生でこの街に移り住むようになってから、季節の変化に敏感になったかもしれない。私はこの街が夏に見せるそのような姿が好きだった。  私がこの街で過ごす3度目の夏。中学生になってからは初めての夏である。  思えば小学生から中学生になった事で、私を取り巻く環境は大きく変わった。  毎朝セーラー服を着るようになった。仲の良い友達とクラスが離れた。その友達と一緒に美術部に入った。学校から課せられる宿題の量が増えた。中間テストと期末テストを受けた。  新たな環境への適応には体力を使うものだ。ただでさえ待ち遠しい夏休みを、今年は特に心待ちにしていた生徒は私だけではないだろう。  しかし100%の幸福など、この世には存在しないことを私は知っている。この世の楽園を思わせる夏休みであろうが、その例には漏れない。  そう、各教科担当の先生から無慈悲に投げつけられる大量の宿題だ。     
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