3.薬物乱用防止教室(1)

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3.薬物乱用防止教室(1)

 夏休みを目前に控えた北中では、毎年恒例だという薬物乱用防止教室が行われた。外部から講師を招いて、タバコやその他危険なドラックについてのあれこれを学び、生徒たちの浮かれた気分を引き締めるのだそうだ。  5時間目の授業が終わると、各学年、各クラスの男女ごとに分かれて、名前の順で体育館に整列することになった。  我らが1年2組の学級委員の指示に従い、クラス全員がまっすぐ並んで体育座りをして講習の開始を待つ。私たちが体育館の床に腰を下ろしてから少しして、私の並ぶ列の左隣に1年1組の面々が整列を始めた。しかし1組は他のクラスとは違い、列の右側に女子を、左側に男子を並べているようだ。したがって、私の左側に女子の列が作られる。  整列を指揮していた1組の学級委員の女子は、その役目を果たしたのちに、自らも20名弱から成る列の中間あたりに加わった。中間あたり、つまりは私のすぐ隣である。彼女はそこに、ちょこんと体育座りをすると、こちらに向かって話しかけてきた。 「お待たせ、シャロ」  そう言って彼女は前下がりのショートボブをさらさらと揺らし、愛らしいえくぼを作った。     
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