3.薬物乱用防止教室(1)

2/6
前へ
/44ページ
次へ
 彼女は高岡彩。私の1番の友達だ。小学6年の頃からの短い付き合いだが、彼女の存在はすでに私の心のスペースの大きな割合を占めていた。  学級委員を務める彼女は度々その特権を使用して、学年集会や全校集会の場で私の隣にやってくるのだ。 「待ってたよ」  私は屈託なくそう返した。  すると彩はわざとらしく驚いた顔を浮かべた。 「あれ? なんか今日は素直だね」 「今日は機嫌がいいのです」  私は目を閉じ、すまし顔でそう言った。  彩はしばらく思案気な顔でこっちを見つめていたが、やがて目を細めると、 「もしかして、夏休みが近いから?」  と聞いてきた。  私は似合わないすまし顔をやめて、頬を緩めた。 「あー楽しみだなー、夏休み」 「夏休みの宿題はたんまり出てるけどね」  彩がいたずらっぽい調子で水を差してくる。 「宿題はそこまで嫌じゃないな。私はそもそも勉強嫌いじゃないし」 「シャロは嫌いなのは勉強じゃなく学校だもんね。なにしろシャロは友達が少な――んん!」  私は彩の口を両手で塞いだ。いくら友達でも言っていいことと悪いことがある。     
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加