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「行っちゃったね」
甲高い声が洞窟に響いた。
ちょろり、といった感じでスライムの身体から黄色い固まりがぼとりと床に落ちてぶるぶると震えている。
あざやかなレモン・イエローの身体。
もう一匹のスライムだった。
ただし、こっちのほうは小さい。手に乗るほどの大きさである。
声も甲高く、子供の声のよう。
「こら! プルプル! お前はまだひとりで動いちゃいかん!」
おおきいほうのスライムが叱った。
叱られた小さいスライムは、ぎゅっと身体を縮めるとすぐに床にべたりとひろがった。どうやらプルプルというのが名前らしい。
「だってえ……」
不満そうな声をあげる。
「お前はまだひとりで行動するほど育ってはおらん。わたしの身体の中に入っていればいいんだ!」
「はあい……」
しぶしぶ、といった様子でプルプルはおおきいほうのスライムの中へとぼん、と潜り込んだ。子供なのか、それとも単細胞生物の生殖のように分裂したかたわれなのか。
ちいさなプルプルを身体の中におさめたスライムは、するすると床を滑るように這い、洞窟の別の場所へ移動した。
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