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複雑な迷路になっている洞窟を、スライムは迷うことなく移動して、やがてもうひとつの部屋へと入っていく。
そこにもルーナが眠っていたようなプールがあり、もうひとりが眠っている。
少年だった。
眠っているのは、ルーナと同じくらいの年頃の少年である。
ぐい、とスライムは触手をのばし、そのさきに目玉をくっつけて溶液のなかに浮かんでいる少年を見おろした。
少年は溶液に頭までつかり、深い眠りについている。
夢でも見ているのか、瞼がときどきぐりぐりと動いた。
黒い髪の毛、まっすぐな眉。皮膚の色は、やや小麦色にちかい。
「眠っている……ルーナさまが目覚めたのに、このおかたはまだ眠っておられる。なぜ?」
スライムはごぼごぼとつぶやいた。
「ねえ、どうしてルーナさまにこのひとのこと、教えなかったの?」
プルプルが黄色い身体をぴょこりとスライムの表面から出して声をあげた。
「それは禁じられている。おたがいの存在は、けっして教えてはいけない。目覚めた後、自然に出会うことが望まれているのだ」
「だれにそんなこと、言われたの?」
「だれって……」
スライムは言葉に詰まった。
そう決まっているのだ。
それがじぶんの使命なのだ。
スライムはいつまでも少年を見守っていた。
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