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日が翳り、やがて夕方になる。
丘の向こうに、夕日がゆっくりと沈んでいく。
夜が空を覆って、星が輝きだした。
足もとに影が出来ている。
空を見上げたカイルは、さえざえとした青白い月が昇っているのを認めた。
あの洞窟で十五年眠っていたせいか、まったく眠気を感じない。
気温も震えるほど寒くはなく、むしろ昼間の暑苦しさから逃れることが出来て、旅ははかどるくらいだ。
と、足がとまる。
「どうしたの?」
肩にとまったプルプルがちいさく声をあげた。
しっ! と、カイルは手をあげプルプルを黙らせた。
緊張が全身をつつんでいる。
敵だ……。
なぜかそう思った。
右手が、腰の剣の柄にのばされた。
鯉口をしずかに引き、身構える。
ぐろろろろ……!
奇妙な唸り声が右手から聞こえてくる。
さっ! と、カイルは剣を引き抜いた。
きらり、と剣の刀身が月の光を浴びてきらめいた。
ずばり!
確かな手ごたえ。
うぎゃあ……!
魂消るような叫びを残し、血煙が舞った。
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