名前

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 その時、はじめてカイルはじぶんが倒した相手を見た。  ひくひくと奇妙な生き物が地面をのたうちまわっていた。  蛇が胴体を寸断され、断末魔の悲鳴をあげている。  その蛇の頭部には、あるべき爬虫類の頭部はなく、かわりに犬の頭がついていた。ばくりとおおきな口を開け、だらだらと唾液をほとばしらせ、犬の頭をもった蛇はぐねぐねと胴体をひくつかせ苦痛に身をよじっている。蛇の背中には犬の毛がびっしりと生えていた。  血だまりの中で、蛇はぐいと身をおこし犬のふたつの目がじろりとカイルを睨んでいる。  月の光を受け、ふたつの目はらんらんと青白く光った。  ぐわり、と大口を開け、犬蛇──というべきか──魔物は最後のちからを振り絞ってカイルに向かってきた。  ふたたびカイルは剣を横に薙ぎ払った。  ぎゃううん……。  吹き飛ばされるように犬の頭が胴体からちぎれ、どさりと地面に転がった。  それでもまだ生きているのか、ふたつの目は恨めしげにカイルを見上げていた。  どくどくと血潮が切断箇所から噴き出し、あたりに生臭い匂いがただよった。  やっと魔物は息をひきとった。  ふう……。  顎にしたたる汗をぬぐい、カイルは思わずへたりこんでしまった。  魔物を倒した!  じわりと勝利感がこみあげてくる。  しかしなぜ、こんな生き物がいる?  犬、そして蛇。  どちらの生き物もカイルは知っていた。その姿を一度も見たことがないのにかかわらず、思い浮かべることが出来る。しかし蛇の身体に犬の頭をした生物など、まるで記憶に浮かんでは来ない。
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