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ゆっくりと草で剣の血糊をふき取り、カイルは鞘におさめた。
「びっくりしたねえ……外にはあんな魔物がいるんだ」
ようやく、といった感じでプルプルが話しかけてきた。
ああ、とカイルは言葉もなくうなずいた。なんだか返事をするのも億劫だ。
「旅をつづけよう……」
つぶやき、カイルは立ち上がった。
「でもルーナは大丈夫だったかなあ。やっぱり魔物に出会っているのかな……」
ぎくり、とカイルの歩みがとまる。
「ルーナって、だれだ!」
するどくプルプルに尋ねた。
ぴくん、とプルプルは身を縮めた。
するり! と、プルプルはカイルの肩から離れると、バッグの中へ飛び込んだ。
カイルはバッグを掴み上げ、怒鳴った。
「答えろプルプル! ルーナってだれだ?」
ぶるぶる……バッグが細かく震えている。
「駄目だよう……言っちゃだめって言われているんだ!」
くぐもった声が、バッグから聞こえてくる。
答えろよ! カイルは荒々しくバッグをゆすぶった。
しかしプルプルは答えない。じっとバッグの中で黙ったままだ。
「そうか、答えたくないならしかたがない。それじゃ、お前ともここでお別れだ」
しばし沈黙。
「お別れ?」
ちいさな声が聞こえてきた。
「そうだ。お前をここで放り出して、ぼくは旅を続ける。さっきの魔物は、ぼくの剣でやっつけたけど、お前はどうかな? お前なんか、ぱくりと一飲みで食われちまうだろうな」
ぷるぷる……。
バッグが激しく震えだした。
カイルはバッグを地面につけ、話しかけた。
「じゃ、お別れだな。元気でやれよ。魔物に出会わないよう、祈ってやるよ」
「ま、待ってよお!」
情けない声が聞こえてきた。
「言うな?」
うん……諦めたような声がして、にょろりとプルプルが顔を出した。
「魔物、いない?」
ああ、いないよと答えると、プルプルはするするとカイルの肩によじ登った。
「ルーナっていうのはね……」
プルプルは話しだした。
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