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少女は目覚めていた。
夢の内容は目覚めた瞬間、忘れていた。
ただ、なにやら楽しげな記憶だけが残っている。
ぱちぱちと少女は瞬きを繰り返した。
闇。
ただふかい闇がどこまでもひろがってる。
身動きすると、少女はじぶんが全裸で、なにかどろりとした粘液のようなものにつつまれているのを感じていた。
おきあがる。
ふら──と、眩暈がして少女はしばらくうつむいていた。
目覚めるべきではなかった──。
奇妙な感覚がおしよせる。
後悔のような、戸惑いの感覚。
間違ったときに自分は目覚めた。
それだけはくっきりと心に焼き付いている。
「なぜ目覚めたのですか?」
ごぼごぼと泡立つような声が聞こえてきた。
少女は顔をあげた。
目の前に、なにかいる!
なんだろう?
闇の中、ふたつの瞳がじっと少女を見つめていた。
少女は両手を前へつきだした。
立ち上がろうとする。
が、ちからがはいらない。
つるりと足がすべり、どうと倒れこむ。
どぼり──。
とろりとした粘液の中に、まともに突っ込んでしまう。
必死に手探りをし、進む。
両手がなにか、ぶよぶよとしたものに触れた。
「灯りを──」
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